| 友人の招待で拝見いたしました劇のお礼として(ninjyaと筍)の部分を書きました 続編の要望もあり一部変更して完結としました。 題名 お父さんなんかにならないで (ninjyaと筍) 私と運転手(1年先輩)を乗せて青い車が地下駐車場に吸い込まれるように くねくねと降りてゆく、もうすでにあたりは暗くなって、街明かりが ウィンドウにまぶしく飛び込んでくる。 「東浦町とはだいぶ違うなあ」「あのな!!おまえここは都会だぞ」、 隣からしかるような口調で私の横面をたしなめる、 「やっぱ都会なんだよな××」とうなずくように横からの言葉をもごもごと消化している、 隣ではこじんまりとした駐車スペースにぐいぐいねじ込むようにハンドルが2転3転 苦戦中「降りれんで俺、先に降りるよ」、、、、「こりゃあかんわ」 また私はくるまの助手席に飛び乗り、廃車場にもう一台車を捨てるところを なんて言ったらはり倒されるだろうし、旅人がオアシスにたどり着く こんなんだったら 格好もいいかな、それとも月軟着陸宇宙ステーションなんかSFチックで??? 「おい!!でるぞ」「へへ軟着陸成功、上出来上出来」さきほどより遙かに広い 市営駐車場のあちこちから勢いよくドアを閉める音がこだましている。 駐車場をでると先ほどのネオンの嵐かと思いきや、あちこちから集まってきた人たち、 シルエットの集団がぽつんぽつん、楽しそうに笑っている。 「大会場はどこですか」いかめしい顔で立っているガードマン(けして若くない) この上だよ!!そこの階段を上ってください。 事務的な返事が返ってきた(たぶん俺たちだけじゃない、こんなことを聞くこと自体が田舎者といわれるゆえんかもしれない)。 「はよ行って、席を確保せにゃいかん、10−16だぞ、、、、」 改札らしいカウンターの向こうで業界関係と思わせるきれいな方が、目で即している。 この席は俺たちのだと誇示するように、居座ることにした(指定席だから)。 初めてこの会館に来たのだから周辺の散策などと思うのだが、なかなかゆとりがない!! 程なくすると、会場が騒がしくなってきた振り向けば空席を見つけるのが難しいくらい。 40がらみの女性が、にこにこしながら近づいてきた ここに来て、初めての知り合いなので安心感からか、先輩はほっとした様である。 息子さんの顔をしらんでよくわからんが、髪の毛の立った、青い人だと言うことだった。 (注、常時そんな格好をしているわけではない) 目を凝らしていると、あたりが急に暗く、いきなりけたたましい音楽 (としょりは、びっくり) 会場を狭しと忍者たちが、ぴょんぴょん、ぴょんぴょん 頭の丸い筍の間を跳回っている。 私たちの席の前は何列かあるのだが、その方たちが座っている姿はまるで筍が 規則正しく並んでいるように見えた(私の個人的発想なので現実とかけ離れている場合は失礼) 後ろの方から見れば私もただの筍なんだから、そう考えると一人笑えそうになってくる。 周辺が暗いので、馬鹿笑いしなきゃ大丈夫だな ショー・コスギ、顔が見えた今までテレビ、雑誌でしか見たことがない、 15メートルほど先に いるのは間違えない、ボナード・ハンソン俺もこんな声がほしいなあ、 暗闇に投げかける、、、お母さんどうして??(父親も一役買っている) 親に言わせれば、おまえは工場で働くのが一番 (歌手にならなくて良かったと馬鹿笑いしながら、肩をぽんぽんたたくに違いない) なんとなしにここまで来たのだから今更疑いもしない、「やめとこ頭いたなるわ」 劇が始まって40分くらいであろうか天地がさけそう スリムドカンではないがドッカーン(またまた!としょりは、びっくり) 筍たちが一間ほどの入り口を広げんばかりにはき出されていく、 そんなとき、若い娘さんと目が合ってしまった(さきほどの女性に、顔立ちがよく似ている) ぴょこりと会釈したようにも見えた(こんなおっさんしらんわ、いや??そうでもない) お嬢様だと思った私も何となく、ぴょこりとしながら筍になった。 数メートルのところに ジョー・オオスギそんな筍さんたちに押されるように大きな口から押し出された。 (かぼちゃ) あれから数日後、突然着メロなしの携帯が騒ぎ始めた(電話というのはいきなりが殆ど) この時間は決まって相棒なのである、「ちょっと、ええ所へ行くで、すぐ行くでな」プチ? 遠慮会釈のないというかかなり一方的なのだが長い間に飼い慣らされたのか何も感じない まあいっか!! 着替え着替えと!!仕事は暇だが出かけるのは忙しい何でこうなるのか理解できないまま クラクションがけたたましく催促している「今日はめちゃくちゃ早いな!!」 よほどええ所なんだ??? しばらく走っただろうか何の会話もないまま、CDレコーダーだけが音楽を奏でている。 睡魔が容赦なくおそってくる、今日の仕事は11月終わりでもあり寒かった 車中のヒーターも一役買って心地よさを誘っている 気が薄れて行く中で、曲が小さな音に聞こえる。 だいぶ長い間走ったのだろう、あたりは真っ黒 「今日はちょっと都落ちかな!」と先輩があごをしゃくって窓の外を見ている(夢の中)。 遠くの方で何か喋っている、何なのか聞こえない直後息苦しくなってきた 寝ている間に何かが起こったのだろうか思い切り目をカット開いてみると 先輩が、私の首に大きな手を巻き付け食い込んでいる、息が出来ない やっとの思いで振り払った、「何するのしんでまうがね!!」 「俺は寝んと無事にここまできたんだぞ、感謝してほしい物だ」 その通りだから返す言葉もない、頭をかきながら横を見るやちょっと血走った感じ 「爪楊枝でもくわえたら、様になるな」「とろいことをいっとるなあ、やくざじゃねぞ」 何軒か並ぶスナック長屋何処かで聞き覚えのある名である看板がほほえみかけるように 鈍く光っている、(かぼちゃ)か??下に小さくスナックと書いてある。 さきほどの件で、気が引けたのでドアボーイになったつもりでいらっしゃいませなんて おどけてドアを開けた、中から遠慮のない歌声があたりを制している、 愛煙家なので煙は苦にならないのだが煙幕といった方が良い むせかえるほどで、ごった返している。 店の奥から「いらっしゃい、マーちゃん先日は見に来てくれて、ありがと」 「こちらこそ、なかなかみられないショーをありがとう今日は相棒を連れて来たで」 きっと常連客なんだろうとおもった、カウンターだけの店なので満席で隅にある いすを2個調達すると、手でシッシとなにやら命令している 背中を丸めて座る客たちがアコーディオンの様にしゅるしゅるとちぢんで、 滑稽にも見えた、相棒(マーちゃん)がドカッと 椅子に臀部をのせた、俺はこっそりと「小声で払いは決まった!!ごちそうさま」 喫茶店くらいはいつもマーちゃんがおごってくれるので、 今日もと思うとすまない気がする 前に置かれたボトルには白いペイントマーカーで、でかく持ち主の名が刻まれている 以前から聴かされてはいたのだがここに来るのは初めてなので、 なんか一人で来ているような感じで浮いてしまっている、 先日の40がらみの女性、感じがにている若い娘 カウンターの中で踊っているように見える、ここが彼女たちの舞台なんだ 若い娘は、宣告のお嬢様ではない、たくましく生きる女性に変身している。 カウンターという境界線の向こうは戦場なのかもしれない、 親譲りなのか、コップが一杯の状態でおいておけない性分で水割りが出来るやいなや グビグビ行ってしまう性格、直さにゃと思っているのだが直らない そんなことを思いながら、辺りを見回すとアコーディオンの皮が取れてしまったように がらがらである、おもむろに着メロのない奴に目をやると午前様ではないか 相棒を肘でつつくと、「何だ」ちょっと語尾を上げてかなり来ているようでまずいな!! 「まんだええ、明日はやすみだし、みんなでラーメンでも」と言いかけたところで 「わたしいくー」、ほんのりと目の周りが桜色そんな4人 顔を合わせて満場一致なんか示し合わせた様で 初対面ではないが、初対面なのであるこの垣根のない人なつっこさは もって生まれた人間性なんだろうか、勝手に引き入れ私も解かしてしまったようだ ほろ酔い気分で外にいるとドアの鍵を閉める音だけが、厳格にガシャリ 女性二人そそくさと出てきた、あれ!!全然別人、以前見たことのある親子だ どこにでもいる母親と娘!! あのドアの向こう、カウンターの中には私の思いも及ばない空間があるのだと思った。 ただいま 今日は日曜と言うこともあって、大須の大須のパソコン街をぶらぶら歩き 以前は観音様だけの門前町歓楽街が有ったそうだが、現在は様変わりして 若者の街に変容を遂げようとしている。 電子機器と若者の衣類、セコハンも大いに幅をきかせ、あちこちの路地裏にまで 浸透し始めているそんな路地裏に一風変わった看板がこれ見よがしというわけではないが なんか目立つ、何だろうちょっと顔をのぞかせてみると何処かで見覚えのある にこりとしてこちらを見ている、あっ、、、あれはいつぞやの、、、ぴょこりだ けっしてカウンターの女性ではない、ラーメン屋で横に座り意気投合「親子みたいだね」 そんなたわいもないことを言って笑ったりしていた。 そのときに聞いた話なのだが、ぴょこりのお父さんは自動車事故で亡くなり保険金で 現在の店を始めたと聴かされた。 「お父さんだよね」と言うなり左腕に巻き付いてきた、しょうもない奴だな!! えらい奴に逢ってしまった、「ショエー心の中で叫ぶ、なるべく気取られないように」 「のどかわいちゃったよ」と顔をのぞき込んできた、こうやって人なつこくされると 子供の居ない私にとって、いきなり娘が出来たようで、メロメロである。 路地を2つばかり曲がると大須電気街の草分け的な(アメ横ビルの一号館)を 入ったところに、コンパという名の喫茶店で休憩することにした。 明るくきれいとと言うわけではない、むしろ古びた感じを売り物にしていると 言った方が似つかわしい 「パフェがいい」「太るぞおー」「お父さんしてる」なんか変な気持ちになってくる。 知らず知らずのうちに口うるさい親父に成っている自分自身に苦笑する たわいもない娘との話に1時間くらい居座っただろうか 「いけないお母さんにしかられる」私の顔をのぞき込んできた「送って」 「しょうがない娘をおいていくほど、つれない親じゃないし、まあいっか」 店を駆け出し車に飛び乗ると、料金所の遮断機も超遅く感じられた 夕日が看板に照り返し、むちゃくちゃきれいに見えてきた 「早く早く」即されるままに私の手を引き、ドアに首だけつっこむと「ただいまあ」 中から「お母さんお客さんを連れてきたよ」「若いのかい」「うんうん」「だれ??」 「ほーら」と言いながらいきなりドアを全開「ジャーン」 あら「かっちゃん先日、、、今日は大須に行くと言ったっきりでご迷惑をおかけしたんじゃあ」 「いやあ」と言いかけると横から「全然そんなことはありませんわ!!」と、、、 同じことを口の中で言葉にならないまま復唱していた親子逆転。 ぺこぺこ頭を下げぽりぽり頭をかき照れ隠し、これでまあかわいいなんて言われりゃ 世話ねえやの一言につきるというもんである 一番奥のカウンター席に私を追いやると ここここ、年寄りを介護するようによいしょ、「結構重いね」「うるさいわい」 (ぴょこりん、本名は美香というのだが)が奥へ駆け込んだ 出てくるなり隅にある鏡に向かい「またつきあってよね」「またそんな!!」 「いいよね」と振り返る「うっ」さきほどの茶目っ気たっぷりの美香ではない ニット系のスーツだから体の線がくっきりとして伸びやかな輪郭に 目のやりどころに困るほどである。「化けたな、、」「コーン」狐のまねなんかして 「今日の払いは、葉っぱじゃだめよ、なんちゃって!!」 「店の名前変えた方がいいかも」そんな話の間もそそくさとお給仕をしている。 どかんと置かれた氷、無造作に投げ出したボトルの首に飾りが付いている むろん名前は(かっちゃん)御ニューなのにうなだれた褐色の瓶 お小遣いの少ない私にとって非常な出費、おそれおおいばかりである。 そんなことを考えながら、ヨーク、、見ると瓶の中身は半分ほどに見える 「新品だぞおい」と思っていると、「もうこないから」首飾りだけ御ニューなの お父さんにそんな大金は悪いもんね。 早いと小切り上げて、かえらにゃシンデレラになった心境である、 我が家ではきっと夕食が片付かないと、ぶつぶつ言っているに違いない そんなことを考えているうち「ねえ踊ろ、まだ早いし貸し切りだからいいよね!!」と 母親に茶目っ気たっぷりに言い張ったかと思うと、どこを回ってきたのか私の背後に ぴたりと張り付いた伸びやかな姿態が背中にほのかなあたかさで伝わってきた、 何かお父さんにふさわしくない物が突き上げてくる、かといって振り払うわけにも行かず 店に入るときと同じようにエスコート、大根を引っこ抜かんばかりに 「お父さんダンスできるんだ」ちょっとおどけた外人口調で「すこうし」「うまいうまい」 スローなルンバが時を押し流して行く、はにかんだような目がほほえみかけている だいぶ酒が廻ってきた、いつしか時計の針は短い方と長い方が上向き、、、、やっちまった 新婚の頃 私は絶句今日の始まりは、大須だったんだがどんなパソコンを見に来たんだろう。 我が家に帰り着くやいなや、大変な剣幕である荒れ狂う妻を見るのは初めてである 何とかその場は取り繕ったものの、ぎくしゃくしているのは仕方がない 結婚して1年目くらいの頃だろうか、妻と二人して不妊治療と称しては 訳のわからない薬を洗面台の前でアーンなんてのみあさった物なのだが いっこうに効果の無いのに、ともに憤慨したのは昨日のことのように思い出される そのまま10年も過ぎ去ってしまったそれ以後は子供なんていいやなどと言う言葉で すり変えていたような気がする。 夜遅い日が続く物だから、怒っているのか、、、ごまかし続けたことに 怒こっているのか、一人でもいい出来てくれたらと今更のように思いながら 布団をかぶるのだが、なかなか睡魔さえ見放したようだ 気が付いたのは、とっくにお天道様が真上に来た頃、いつ頃寝たんだろう カーテンの隙間から空が白々としているのは覚えている。 考えればこのぼろアパートに住み着いて13年にも成る、その間に マイホームなど頓着しない性格なのか、その気にもならなかった、と言うより 二人だけなので必要としなかっただけなのかもしれない、 もうかみさんは仕事に出てスーパーのレジをたたいているのだろう ここ3、4年前からのことであるが、妻がしきりにパジャマを 下着にしないで!!、理由を聞くと時折親父特有の変なにおいがするそうなので 口うるさく着替えを迫られるし、風呂も同様なのである クンクン大丈夫、まいっか??? 「さて近くの喫茶店でコーヒー飲むか」こんな状態を見れば私のことをてっきり フーテンかプータロウ???と思うに違いない 職業は自称ネットマーチャントなんちゃって 中古のOA機器を引き取ってきてはネットで販売している よってネットマーチャントなのだ!!! 以前はやたら変な物(妻の評価)を作ってはお客さんに販売していたが思わしくないので 一年ほど前から本気でこれを職業としているに他ならない 重たく頑丈に出来たドアを押し開けると、コーヒーの香ばしい香りが一面に漂っている 「おはよう」「何でわかるの」だってかっちゃん、襟元からパジャマが顔を出しとるがね いつも言われる通りにしときゃよかった お父さんなんかにならないで 3日一度は(カボチャ)に顔を出す生活をもう何ヶ月続いたのだろうか 行けば必ず親子ごっこ、ダンスに始まり顔がすりそうな位置でひそひそ話 8時には店を出る、時折のアッシーくん 数えてみれば、6ヶ月にも成る、なるべく早く帰るように9時には帰っていたので へんてつもない生活が続いたのだが、このぼろアパートが味気ない物に見えてきた。 カボチャ開店10周年記念でパーティとのこと、5000円で飲み放題 パー券もらっとく、5000円差し出すと無造作にポケットにしまい込む母親 代わりに手の上にパー券が券なんて無いよノートに書いとって だらしのなく広げられ、縦の線だけが引かれている。 「名前と右に丸を書いてね」仕方がないので名前、領収と書き込んだ 今日のつまみづくりに手がはなせないのか返事もそぞろ それとなく楽しみにむろん妻に気取られないようにで有るが、その前日のことである 聞き覚えのある声だがくらい響きで「お母さんのお兄さん(叔父)が亡くなって、 明日つやなの遠方なので明日午後に行かなければいけない、パーティーのお客さんもキャンセル出来ないし、 朝からでいいから手伝ってよ」半べそ状態の声に 「いいよ」急に明るい声が跳ね返ってきた、「午前中は母さんが居るから」 当日の朝9時の約束なので妻より早いので朝飯もそぞろに、「行って来るわ」 「今日は楽しそうね」ぎくりとした 理解できないだろうなこんな親子ごっこ、駆りたてられるように道を急いだ もう支度が始まっているようで、いろんな香りがごちゃ混ぜになって さほど広くもない、店の中に充満してくらくら来そうだ。 勢いよくひねられた蛇口から、水があちこちに飛んで額に泡が付いた美香が面倒くさそうに顔を上げる、 カウンター越しなのでこちらから見ようとすると覗き込むような感じで 「おはよ」、「ンもう」手を洗いカウンターから出てきて、なにやら着せ始めた 「これはあたしのピンクイからかわいいでしょ」「フリルも付いとるし、変じゃん」 「お二人さんがんばろうね」奥からたしなめる様な口調で飛んできた 切れ端をつまんだりして、昼食には事欠かない「うんめー」時計はもう5じ時 やっと片付けも終わり、奥の六畳の控え室兼更衣室一休み一休み 知らず知らずの、うたた寝いきなりけたたましい音で飛び起きると開店のお時間 いつもこのサイクルで廻っているのだろう、この時間になると毎日開店時間を知らせているのだろう 一人二人見る間にちっぽけな店にはみ出んばかりのお客と言ってもおなじみさんばかり やあ、しんちゃん、六さん見慣れた顔が勢揃い、数時間かかって作ったオードブルも 見る間に平らげていく、こういうときは絶食でもしてくるのかそう思えるほど 日頃とは別の胃袋ではないかと思えるほど、飲み放題と言うことも逢ってか カウンターの隅は空瓶の山、俺の懐感情で行けばかなりふんだくっておかないと 赤字になるな、 4時間もたった頃一人二人と減っていくみんなの食べ散らかしで ゴミ箱のようになっている。 1時間ほどで片づけが終わると美香もかなりメーターが上がっているようで、 明日洗えばいいか、そんな言葉が出るのもうなずける。 アパートの二階まで送り届けるにも、たつのがやっとの荷物しょうがない おんぶだぞ、いきなり柔らかい固まりが背中に張り付いてくるやさほど太くない腕が 首に巻き付いてきた、階段を上るや腕が区部に食い込んで苦しい あまり苦しいので、死にそーよろけて階段の踊り場でどすん、大荷物だ 「重くて悪かったわね」そうじゃあなくて、首、首、あっそ、熱くもなく寒くもない 今から夏の始まりと言った季節、ぼんやりと澄み切った空を見ている、 星がひしめき合って、押しくらまんじゅうのように見える 「この顔を見始めて半年以上になるなあ」「どう気に入った」「ああ」「まっ気のない返事」 ほとんど仮眠状態の美香を背負ってソファーにどっこいしょ、 気持ちよさそうに寝息を立てている、しばらく顔を覗き込んでいたが夢の中なんだろう 帰るか、かなりくたびれた靴に足をねじこんでドアノブを回し押し開けようとした瞬間 さきほどのソファーの方から、どたどたと音がして腕が首筋に食い込んできた 耳元で何か喋ってしゃべってるようだが、「帰ってはだめ、帰らないで」 そんな風に聞こえた 巻き付いた腕をはがすと、大粒の涙があちこちにしたたりくしゃくしゃになっている 10歳くらいの子供がだだをこねてしきりに訴えているように嫌々をしている 「もう寝ろよ」「お父さんはもう帰る」 ドアはすでに口を開いて外に追いやろうとしている、立ち去ることも出来ず しばらくドアに背中をもたせかけ、躊躇している。 「帰っちゃだめ、お父さんなんかにならないで」その言葉がドア越しに突き刺さってきた、 そんなに大声で喋る美香ではないので、せいっぱいの大声を出していたのだろう ドアの内側でへたり込むような音がした、「お父さんお休み」 どこをどう帰ったのか、記憶がない背中に食い込んだ言葉がさらに傷口を広げようとしている。 孤独 ちゃんと布団の上に寝ている、もう妻は出かけているのだろう。 物音一つしない、ふらふらとキッチンにはいると1枚の便せんと、緑色の上質紙が おいてある近づいて見ると便せんには探さないで、ただ一言 上質紙にはきちんと署名され、捺印され以前見たことのある様式 離婚届だっ、私の書き込む欄は何も書いてない 正気に戻るのに10秒とかからないくらい頭がカットして フル回転を始めた、「げっ」昨日と言い今朝と言いなんてこった いい気になってふらふらしとるから、この結末 インスタントコーヒーをすすり込むと足早にスーパーに出向くと 以前何度か家内から聴いていたのですぐ解った、一週間ほど前に退職届けが出され 処理はすんでいるとのこと、ここ二、三日、朝居ないので出勤した物と思っていたので 気が付きませんで、しかし肉屋の店員が急にこなくなり音沙汰がないとも言っていた。 そうか彼女も一生懸命だったんだ何もしなかったのは俺一人だった。 書類は提出する気にも成らないず、彼女が幸せになろうとするのをじゃまするわけにも行かない、 このことにとやかく言えるほどのことは何もしていないのだから おいたままの、離婚届にほこりが載ってきている。 もう何ヶ月かたったんっだ、こんなことでしか時間を推し測ることが出来ないほど 浮遊物のような時間が過ぎいく 探そうともしないほど、何でもない存在になっていたかと思うと 自分自身が情けなく感じられる、見上げれば天井のシミも懐かしい バージンロード 季節は冬将軍の声もちらほら(カボチャ)この看板が記憶の中ではかなり古ぼけたように感じられる、 けっして忘れたわけではない「お父さんなんかにならないで」 まだ私の背中に刺さったままだ、サディスティックだと思われるかもしれないが 仕方がない、ぼんやり秋のすじ雲を眺めていると、着メロのない携帯が騒ぎ始めた 電話に出てみると、先輩ではないか(ちまたではマーちゃんと呼ばれている) 美香が結婚することになって、バージンロードのお父さんをしてほしいしてくれないと 絶対結婚しないと言ってるので、「やってくれ」背中の傷は癒えていないが 仮面でもかぶっていくか「いいよ」あさっての日曜日だぞ普段着でいいで モーニングは用意してくれる「わかった」 背中に入った物が一回転したような痛みだ「うひゃー」どうかしたのか電話の向こうで 心配する声が聞こえる「何でもない、何でもない」 じっとしていると考え込むので、離婚届のほこりでも払って出してくるか。 さすが判一つと思ってもなかなか押せない物であるこれで無縁の物になると思うと! 「いい加減にしろ」と自分の頭を拳固でごつん自分でバンバン 翌々日先輩の車で出向くこととなった、控え室では親戚の方たちが詰め込まれて 腰をおろすところもない、 着替えはすましていたので、出番を待つばかり 知り合いなど全然居ないので外の待合いでさきほどの こちらに向かう際車中で結婚のいきさつなんかを思い出していた、むろん私と美香とは ただのお父さんごっこ、とても仲良しだと思っているようだし、 重傷を負った私の背中の傷なんぞには、気づくはずもなようす お母さんの薦めで、サラリーマンの方と見合いをしたんだそうだ、いたく先方さんが 気に入られて、2ヶ月くらいのうちに話がまとまったそうだ 「どうもどうも」お母さんが来て、「娘が聞かないもんで」 こんなことお頼みしてすみません、儀礼的な挨拶もそぞろに 「娘はこちらです」花嫁の控え室に案内され、あんなこと以来なので顔を出しづらい 勇気を振り絞って(顔はこわばっていたんだろうな) 「やあ」以前3日に明けず見た笑顔で内心ほっとした「おめでとう」 「ありがとう」 通り一遍である(急にさほどうれしくもないと言った感じ) 逃げ去った者なんかに用はないはずなのにそんなことを考えなららしばらくすると 係りの方だろうが、歩き方なんかいろいろ指導してくださっているのだが 耳に入ってこない、想い出ばかり場脳裏に浮かんで振り払おうとしても 振り払おうとしても立ち去ろうとはしない、「なんてこった」 4月の頃には巻き付いては居なかった、知らず知らずのうちにごわごわした私の手の中に 少し小ぶりの柔らかい手が滑り込んでくるのが自然になっていた 美香もさほど派手ではなくむしろ地味な物を意識的かどうか解らないが 着ていたような気がする、端から見れば歳の少し離れたカップルか夫婦にしか 見えなかった様な気がする 「お時間が参りました。」 係りの物の者の後を付いていくむろん美香は巻き付いている、 重そうなドアが苦しそうな音を立てて迎え入れようとしている、マーちゃんが小声で 何か頭の中は真っ白、祭壇に近づくにつれ婿殿が近づいてくる 頭も中でなり始めた(主人公の男性はエレーヌと叫んだ曲だ) 手前に来たところで、けっして大声ではない「美香、行こう」 こっくんとうなずいたようだ、手をさしのべると いつものように、滑り込んできた、手をさしのべていた婿殿を美香がもう一方の手で 突き飛ばしてしまったので、よろけて参列者の膝にどかり、さっきの入り口に向かってまっしぐら もう少しと言うところ、見知らぬ男性が制止にはいてきた、姉ちゃんどうするんだ nijyaである、5秒ほどにらめっこをしていただろうかマーちゃんが飛び込んできた 「先輩すまないもう譲らない」「解った」忍者を押しのけた手でつまんだ車のキー ひったくるように、大戸を押しのけると、小春日和なので太陽の日が 一気に差し込んでまばゆいくらいだ、本来なら拍手と、米粒が降り注ぐはずだったのに わき目もふらず、車に飛び乗った よく整備されているのだろう、滑るように郊外をすり抜けた 半島道路にはいると、起伏の激しい道路だセンターラインが白いリボンのように どこまでも続いて、「こんなバージンロードもいいよな」問いかけたのだが 寄りかかるようにして、以前見続けた穏やかな寝顔 軽い寝息を立てて、寝てしまったようだ END |